2009年 02月 18日
先日会社の入社3年目の社員5人ほどと飲む機会があった。4年前に就職試験で面接をした人たちである。私は最終面接をしたわけだが、ある理由があって採用人員の3倍ほどの学生と面接をした。
彼らは私がどんな質問をしたかすべて覚えていると言うし、私も彼らを合格にしたポイントを覚えていた。[君はあれからマチュピチュには行ってきたの?」[少年野球のコーチは続けていの?]とか聞くと覚えていてくれたんですか?と驚いていた。私に限らず面接する側も結構何年も覚えているものである。 私も何十年前の面接のとき「物事を半歩左から見る」と答えたことを、その後私の仲人役をしてくれた上司は何年たっても思い出してくれていた。 ある理由があってと書いたが次のような理由である。 最終面接にくるまで何回かの面接を経てくる。人事部を疑うわけではないが同じようなタイプの人ばっかり、つまり世に言う優秀な人ばっかりOKを出して来るのではないか?実は荒削りな大器晩成型の人間がふるい落とされていないか?とんがっている人を数人はとりたい。それなら多少多めに面接をしようと人事に指示をしていた。結構大変な作業であるが、こちらも真剣である。一日が終わるとぐったりしたことを覚えている。 役員と人事部長、それと私が相談をせずに順位を付ける。それを持ち寄って調整後、総合順位を付けていく。結論から言うと数人は集中するが、後は全くばらばらである。と言うことはすでに何回もふるいにかけられてきており、特に若いリクルーターの意見は十分荒削りだが魅力あると人はそういうコメントをつけて上に上がっている。最終面接に来る人は誰が合格してもおかしくない状態である。 それでも誰か決めなくてはならない。みんな素晴らしいことを言う。しかし面接する側にも相当の[勘]が蓄積されている。ハウツー物で読んだこととか、何々のサークルの幹事をしていて、なんとか大会で準優勝したときの。。。。はもう結構ですというほど書かれている。 本人の人間性、真剣度、腹のすわり具合、さわやかさ、それにいざと言うときの地頭力。これらを瞬時に読み取っていくわけである。数分間の真剣勝負で、面接する側に何か強い印象を残せる人に○を付けていくわけである。 今の就職試験制度は問題はいっぱいあると思う。しかし今はこれを乗り切らねばならない。あまりテクニックに走らず、じっくり自分を見てもらうよう、また主張できるような訓練が大事だと思う。 そしてひとつでも二つでも、自分が大切にしてきたこと、この会社で生かして行きたいことを自分の言葉で伝えて欲しい。 #
by boosternet
| 2009-02-18 19:49
2009年 01月 16日
部下を海外駐在に出すとき常に言うことがある。「仕事もがんばらなくてはならないが、それより3人の心を許しあえる友人を作って来い」と。
国民性も文化も違う人と、仕事上の付き合いは出来ても信頼しあえる関係を作ることは意外に難しいものである。 JMと最初に出会ったのは今から30年以上前だから、お互い30そこそこだったはずだ。当時の英国はまさに「英国病」の真っ盛り、労働党政府の大盤振る舞いの福祉政策が続き、鉄道やら、郵便のストは日常茶飯事であった。まだ階級社会が色濃く残っており、パブでも「サルーン」「パブ」とに分かれていたなんて皆さん想像できないでしょう。 JMはあるシャツメーカーに勤めていたが、どちらかと言うと下流の出であった。何とか現状打破をしようとする若者のみなぎるパワーと、どうしても越えられない壁にイラつく不思議な魅力を持った男だった。彼は会うたびに[こうすればビジネスのスタイルが画期的に変わる]とか[今のやり方ではだめだ、もっと世界に出て行かなくては]とか彼の夢を語ってくれた。彼の発想は当時の英国の会社では受け入れられるはずもなく、またそれを受ける私にしてもそれほどの力が伴っていなかった。それでも二人で相当のリスクを張って、がむしゃらにビジネスを増やしていった。 そして「いつかは一緒に事業をやろう」と約束をしました。 そんな彼が彼の会社で一気に出世をしていったのは、私が帰国してからしばらくたってからのことだった。サッチャー政権になり、世の中を変えていこうという機運になってきて、従来のような階級の壁もどんどん壊されていった。また繊維産業の不況が続き、古い経営者では対応できなくなり、若くても実力のある者が必要とされてきたからです。 私も担当は替わっていましたが、それでもアジアに来るたびに私のところに寄っては、いつもの調子で夢を語り、また「日本人は自分の国のよさを知らない。こんなに有効なシステムをもち、優秀な人材がいる国はない。もっと生かせ!」と檄を飛ばされたりしました。 10年の年月が流れ、90年代の初めに私が2度目の英国駐在となりました。サッチャー首相は退陣する頃でしたが、英国はすっかり変わっていました。逆に日本の商社がこの変化についていけず苦戦をしていました。私は今までの体制を全て捨てて、新しい時代に応えられるような組織に変えようと思いました。 JMは着実に実績を重ね、英国の大手繊維企業のトップになっていました。お互い時代の変化を敏感に感じ取っていました。「今変えねばだめだ。」とお互いの自宅に泊まりあって朝まで議論をする日が続きました。 結論から言うと彼には会社を辞めてもらい、私も従来の組織を閉じて、英国中部にあるノッティンガムと言うところにJ/Vを作りました。彼が新社長であり、英国人を中心とする会社です。当然日本の本社は大反対でしたが、潮の流れもあったのでしょう、徐々に大きなサポートをしてくれるようになりました。私も日本に帰り、直接はこの会社とは関係なくなりましたが、新会社は商社の世界のネットワークを使いながら、ヨーロッパを代表する繊維品の輸入会社に成長しました。二人で当初決めたとおり、10年は社長をやり、その後は後進に道をゆずりました。[モルジブあたりでゆっくり酒を飲もう。]と言うのが彼のメッセージでした。 それから少したった頃でした。その会社の後継社長から電話があり、JMが末期がんで余命数ヶ月、私と話したがっていると連絡がありました。びっくりして彼の自宅に電話をすると、意外に元気な声で〔そう感じただけだったかもしれません〕「何か新しいことをしよう、まだモルジブには早い」と言っていました。一ヶ月もせずに彼は亡くなりました。 葬儀には行けなかったが、半年後ノッティンガムの彼の墓を訪れ、十字軍が出征のとき立ち寄ったと言う彼とよく行ったパブに行ってきました。彼が必ず飲んでいたぬるいビターを私も飲みながら、彼の早すぎる死に思いをはせました。 最近若い社員の海外駐在忌避が多いそうです。海外での生活に魅力がなくなったんでしょう。日本の生活レベルは上がったし、海外には出張でいくらでも行ける。子供の教育、親の介護などむづかしい問題も多い。また会社でも日本にいた方が出世が出来ると思い込んでいるのでしょう。 現実問題として、君たちが会社に入り、海外駐在の可能性は大きいでしょう。100回出張しても得る事の出来ない駐在員生活のよさがあります。本当のその国のよさ、その国に住む人たちのよさは駐在してみないとわからないことが多いはずです。ぜひそういうチャンスには海外に雄飛してください。 君もきっと第2、第3のJMに出会うことでしょう。 以上。 #
by boosternet
| 2009-01-16 22:59
2008年 12月 31日
月1度のペースでメッセージを発信していますが、年末に短く出します。
4月から社会人となる方、来年が就活本番で頭の痛い方、ともかく正月休みはゆっくり考える時間をとってください。私がずーと続けている正月の「投資」を皆さんもしてみませんか? 私は1月1日朝の新聞を5紙ほど買います。2日は休刊ですから、2日かけじっくり隅から隅まで読みます。半分以上は広告ですから中身はそれほど多いわけではありません。来年は暗い話が多いでしょう。明るい話題は石川遼君が出まくるくらいでしょう。その中に地方の話、海外の話、座談会の中のちょっとした発言が結構示唆に富むものがあります。 普段はあまり読まないような科学、新技術もこの際読みます。その内容を日記なり、手帳に書いておくとよいと思います。たった600円くらいの投資ですが、Boosterに参加したきっかけに継続してみたらいかが?意外に役に立ちますよ。 私は英国にいるときはクリスマスの日の「Queen’s Speech」を毎年聞くのを楽しみにしていました。始めて聞いたのはもう30年以上前。当時北アイルランドでのIRAとの紛争が大きな問題でした。「Reconciliation-和解」を訴える彼女のスピーチには本当に感動しました。スピーチがこんなに人を感動させるものだとはじめて知りました。 最近「オバマ演説集」が売り出されたので、買って聞いてみました。2004年の民主党大会基調演説から、先日の大統領当選の日のシカゴ演説「Change has come to America」まで、すばらしい演説と同時に、ながい戦いで成長してきたあとが良くわかります。時間とお金がある方は「あと1000円の投資」をお勧めします。 それでは佳き新年をお迎えください。 #
by boosternet
| 2008-12-31 09:39
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プロフィール
田尻邦夫
NPO法人 新社会人養成塾 BOOSTER 代表理事 [略歴] 1966年 伊藤忠商事株式会社に入社 1996年 同社取締役アパレル第一部門長に就任後、常務取締役業務部長、常務取締役経営企画担当役員など 数々の役職を歴任 2001年 株式会社デサント代表取締役副社長に就任 2002年 同社代表取締役社長に就任 2007年 6月より株式会社デサント相談役 最新の記事
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